25歳独身男性会社員のビッチの記憶

中学の頃、「ビッチ」というあだ名の女がいた。
彼女が実際にどんだけビッチで、本当にヤリマンなのかは誰も知らなかったが、中学生離れした色気と男友達(主に先輩)の多さが理由でそう呼ばれていた。
10年経って、そんな彼女と地元でばったりと顔を合わせたのだ。
僕は東京に出ていて、お盆で地元に帰省していたところだった。
彼女も同様だったようだ。
25歳の女に「よう、ビッチ」なんて言えるはずもなく、僕は最初挨拶に困った。
実はいつもビッチと呼んでいたので、本名を忘れてしまっていたのだ。
「よう、久しぶり。
覚えてる?同じクラスの蔵元」 とだけ言った。
彼女は 「ああ、蔵本くん、久しぶり!何、こっち帰ってきてたん?」 と答えた。
彼女の今の姿はビッチどころか清楚そのものだった。
てっきりヤンキーの彼氏とできちゃった結婚して、既に子どもが3人くらいいる姿を想像していただけに、全くもって意外だった。
「今何してんの?」 興味本位で聞いてみた答えがこれまた意外だった。
「今大学院に行っててね、日本文学の研究をしているんだ」 大学院。
あのビッチが、大学院に行って日本文学だと?どこのお嬢様だっつー感じ。
実家は確か農家だろう。
いつの間にこんな感じの女に変わったのだろう。
中学の頃はバリバリのギャルで頭もそれほど良かったという印象はない。
むしろバカな部類に入っていなかったか?それがこんな風に大人のキレイな女性に変わるなんて、10年という月日は偉大だ。
そう言えば、まだ名前を思い出せない。
そしてついいまだに「ビッチ」と呼んでしまいそうになる自分がいる。